サバイバルレイド24時間 レースレポート:長距離レースにおける補給戦略の失敗と次への改善策
「私のレースログ」をご覧いただき、ありがとうございます。この記事では、先日参加した架空のアドベンチャーレース「サバイバルレイド24時間」のレポートと、特に課題となった長距離における補給戦略とその改善策について詳細に記述します。
このレースは、山岳地帯を舞台にした約24時間のエクストリームアドベンチャーレースで、トレッキング、MTB、パドル、そして多くのナビゲーションパートを含みます。チーム3名で参加しました。今回のレースでは、目標タイム達成のために、事前の補給計画を立てて臨みましたが、結果として補給の失敗がパフォーマンスの低下に直結し、目標を達成できませんでした。この記事では、その失敗を詳細に分析し、次に活かすための具体的な学びと改善策を共有したいと思います。
レース前の準備:補給と体調管理戦略
レースは24時間という長丁場であり、計画的な補給と体調管理が完走、そしてパフォーマンス維持の鍵となります。事前の準備段階で、チームで以下の補給戦略を立てました。
- 補給食の種類と量: エイド間の距離と必要カロリーを算出し、ジェル、エナジーバー、固形食(おにぎり、パン)、電解質タブレットなどを組み合わせ、1時間あたり約200-250kcalを摂取する計画でした。特に消化の良いジェルをメインに、気分転換用の固形食も準備しました。
- 補給のタイミング: 休憩ポイントやセクション切り替え時だけでなく、移動中も定期的に(30分〜1時間毎)少しずつ摂取するよう意識することを確認しました。
- 水分補給: ハイドレーションパックを基本とし、川の水やエイドステーションで補給する計画でした。電解質タブレットは常に携帯し、汗のかき具合に応じて活用する予定でした。
- 体調管理: 前日は十分な睡眠を取り、カーボローディングを意識した食事を摂取しました。レース中は、チーム内で互いの体調を観察し、異変があればすぐに共有する申し合わせをしていました。
装備選択としては、ハイドレーションパックの容量を大きめにし、行動食はすぐに取り出せるようパックのショルダーポケットやウエストベルトに分散して収納しました。特定のセクション後の固形食はドロップバッグに用意しました。
レース中の詳細:計画と現実の乖離
レースは快調なスタートを切りました。最初のトレッキングセクションでは、計画通り30分に一度ジェルを摂取し、水分も十分に補給できていました。ナビゲーションも順調で、チームの雰囲気も良好でした。
しかし、レース中盤、特に10時間を超えたあたりから、計画していた固形食が喉を通らなくなってきました。ドロップバッグで摂取する予定だったおにぎりやパンを受け付けず、ジェルやゼリー飲料に頼る時間が長くなりました。この時点で、「消化の良いもの中心に切り替えるべきか」という判断が求められました。チームと相談し、固形食は無理せず、ジェルと電解質飲料で繋ぐ判断をしました。
さらに時間が経過し、夜間トレッキングに入ると、疲労が蓄積し始め、予定していた補給タイミングを逃すことが増えました。特にナビゲーションに集中していると、つい補給を後回しにしてしまいがちでした。チームメイトも同様の傾向が見られ、互いに声をかけ合う頻度が減ってしまいました。
MTBセクションに入ると、アップダウンが多く、想定以上に体力を消耗しました。この頃には、補給不足が顕著になり、パフォーマンスが明らかに低下しました。特に上り坂でのパワーが出ず、チーム全体のペースが落ちてしまいました。頭がぼーっとする感覚や、軽い吐き気も感じ始めました。これは明らかなエネルギー不足、いわゆるハンガーノックに近い状態でした。
この状況で、私たちはさらに消化の良いもの、即効性のあるブドウ糖やカフェイン入りのジェル、そしてスポーツドリンクを意識的に摂取することにしました。同時に、予定外の短い休憩を挟み、少しでもエネルギーを吸収する時間を取りました。しかし、一度落ちたパフォーマンスを回復させるのは難しく、残りのセクションも苦しい展開となりました。
パドルセクションでは、比較的単調な動きのため、補給はしやすかったのですが、既に体力が限界に近く、十分な力を発揮できませんでした。フィニッシュまでなんとか辿り着きましたが、目標タイムからは大幅に遅れてしまいました。
詳細な振り返りと分析:補給失敗の原因
レース後、チームで今回のパフォーマンス低下の最大の要因は補給戦略の失敗であったと結論付けました。
- 失敗要因1:計画の柔軟性不足
- 事前の補給計画は時間とカロリーベースで立てていましたが、レース中の体調変化(固形物が受け付けなくなるなど)や、予期せぬ高負荷セクションでの消費増に対応できる柔軟性が欠けていました。固形食がダメになった場合の代替プランが明確ではありませんでした。
- 失敗要因2:体調変化の軽視
- 固形食が受け付けなくなったサインを、「一時的なものだろう」「ジェルで乗り切れる」と軽く考えてしまい、本格的な消化不良やエネルギー不足に繋がる前に抜本的な対策を講じませんでした。
- 失敗要因3:ナビゲーション・疲労との両立の難しさ
- 特に疲労困憊時の夜間セクションで、ナビゲーションに意識が集中し、補給がおろそかになりました。定期的な補給を促すチーム内での具体的な声かけやルールが不足していました。
- 失敗要因4:特定の補給食への依存
- ジェルに頼りすぎた結果、胃腸に負担がかかり、さらに補給が困難になる悪循環に陥りました。様々な種類の補給食をバランス良く摂取し、胃腸への負担を分散させる必要がありました。
読者への学び: 長距離レースにおける補給は、単に計画を立てるだけでなく、レース中の体調変化や状況に応じて柔軟に対応できるかが極めて重要です。特に、固形物が受け付けなくなったサインを見逃さず、早めに消化の良いものや代替手段に切り替える判断力が必要です。また、疲労困憊時でも定期的に補給を継続するためのチーム内での意識付けや仕組み作りも重要になります。
装備レビュー:補給と携帯性
今回使用した補給関連の装備で、特に印象に残った点をいくつか挙げます。
- ハイドレーションパック: 容量が大きいものを選んだのは正解でした。頻繁に水を補給できないセクションで役立ちました。ただし、残量が把握しにくいという難点もあります。目盛り付きのものを検討する余地があります。
- ソフトフラスク: 行動中にジェルや電解質飲料を携帯するのに非常に便利でした。すぐに取り出せる位置に入れておくことで、立ち止まらずに補給が可能です。複数個を使い分けることで、水と電解質飲料、ジェルを分けて携帯でき、戦略の幅が広がります。
- 補給食の種類: ジェルは即効性があり便利ですが、今回の失敗から、特定の味や種類に偏らず、様々な味を準備すること、そして固形食やゼリー、タブレットなど、異なる消化特性を持つものをバランス良く準備することの重要性を痛感しました。
- パックへの収納方法: ジェルやバーをショルダーポケットやウエストベルトに分散収納したのは、アクセス性という点で非常に有効でした。しかし、量が限られるため、ドロップバッグやメインパック内の補給食へのアクセス性も改めて検討する必要があります。
具体的な改善策:次に活かすために
今回の反省を踏まえ、次の長距離レースに向けて、以下の具体的な改善策を実行します。
- 補給計画の多層化と代替プランの構築:
- 基本計画に加え、「固形食がダメになった場合の代替プラン」「胃腸の調子が悪い場合のプラン」「予期せぬ消費増への対応プラン」など、複数のシナリオに基づいた補給計画を立てます。消化不良時でも摂取しやすい補給食(例: 液体状のカーボドリンク、特定の消化酵素入りジェル)をリストアップし、準備します。
- 練習中の補給実践と体調の観察:
- 長距離の練習時(特にレースに近い時間帯)に、実際にレースで使用する予定の補給食を摂取し、体の反応(消化具合、エネルギーレベル、胃腸の不調の有無)を詳細に記録します。特定の補給食が合わない場合は代替を探します。
- 胃腸のトレーニング:
- 練習中にあえて多めに水分や補給食を摂取する練習を行い、胃腸の許容量を広げるトレーニングを試みます。また、レース数日前からの食事内容を調整し、レース当日に最高のコンディションで臨めるよう練習します。
- チーム内での補給・体調管理の強化:
- チーム内で「1時間に一度は全員で補給の状況を確認し合う」「体調の変化があれば即座に共有するルール」などを設け、疲労困憊時でも補給がおろそかにならない仕組みを作ります。特定のチェックポイントでの補給タイミングを事前に計画に組み込みます。
- 新しい補給関連装備の試用:
- 目盛り付きハイドレーションパックや、特定の補給食携帯に特化したベストなど、新しい装備を試用し、より効率的な補給システムを構築できないか検討します。
まとめ
サバイバルレイド24時間での補給失敗は、大変苦い経験となりましたが、長距離アドベンチャーレースにおける補給と体調管理の重要性を改めて深く認識する機会となりました。計画性はもちろん大切ですが、レース中の状況に柔軟に対応する判断力、そして何よりも自身の体調のサインを見逃さない注意力が不可欠です。
この経験から得られた教訓を次に活かし、より万全の準備でレースに臨みたいと考えております。この記事が、読者の皆様がご自身のレースにおける補給や体調管理戦略を見直す上で、何らかのヒントとなれば幸いです。