サンライズバレー3日間アドベンチャー レースレポート:複数日レースにおける疲労マネジメントと判断力の維持
「私のレースログ」へようこそ。この記事では、先日参加したサンライズバレー3日間アドベンチャーのレースレポートを詳細に記述します。特に、複数日レース特有の課題である疲労蓄積と、それがナビゲーションやチーム連携、そして総合的な判断力にどのように影響したのか、そして次に活かすための具体的な学びと改善策に焦点を当てて分析します。
レース前の準備:3日間を戦い抜くための戦略と装備
サンライズバレー3日間アドベンチャーは、その名の通り3日間にわたるステージ制のチーム制アドベンチャーレースです。累積標高が高く、テクニカルなトレイルやオリエンテーリング要素が多いことが特徴です。私たちは、目標タイム達成に向けて、特に以下の点に重点を置いて準備を進めました。
- 戦略: 複数日レースのため、初日から飛ばしすぎず、体力を温存することを意識しました。特に睡眠時間の確保を重要視し、各ステージの終了地点での休憩と睡眠を計画に組み込みました。具体的な目標として、毎晩最低3時間は横になる時間を設けることをチームで合意しました。また、日中の補給をこまめに行い、エネルギー切れを防ぐ計画でした。
- 目標: 上位30%以内での完走を目標と設定しました。これは、技術的難易度とチームの現在の総合力を考慮した現実的な目標でした。
- 装備選択とその理由:
- ウェア: 高地の気候変動に対応するため、ベースレイヤー、ミッドレイヤー、防水・透湿性のあるシェルレイヤーの重ね着を基本としました。特にミッドレイヤーには、濡れても保温性を保つ化繊のものを選びました。これは、レース中に雨や汗で濡れる可能性が高いためです。
- シューズ: 安定性とクッション性を重視し、長距離トレイルランニングシューズを選択しました。セクションによっては滑りやすい場所も想定されたため、アウトソールのグリップ力も選定理由の一つです。
- バックパック: 3日間の装備と食料を収納できる容量(約25L)で、フィット感が高く、行動中に揺れが少ないものを選びました。ハイドレーションシステム対応であることも必須でした。
- ライト: 夜間走行・行動が想定されたため、メインライトとして高ルーメンのヘッドライトを2個(バッテリー込み)携行しました。予備バッテリーも複数用意し、計画的なバッテリー交換を行う準備をしました。
- 補給食: 行動食はジェル、エナジーバー、ナッツ類、ドライフルーツを中心に、胃腸への負担を考慮して多様な種類を用意しました。各ステージ終了後のリカバリー食として、フリーズドライ食品やプロテインなども準備しました。
レース中の詳細:疲労との戦いと判断の軌跡
1日目:計画通りのスタートと夜間行動
スタート直後は抑えたペースで入りました。最初のトレッキングセクションでは、計画通りナビゲーションもスムーズに進み、チームの士気も高く維持できました。中盤のバイクセクションでは、緩やかなアップダウンが続き、体力を削られましたが、定期的な補給と声かけで乗り切りました。夕暮れが近づき、夜間行動に入る前にライトの準備と補給を徹底しました。夜間ナビゲーションは慎重に行い、チーム内で地図読みとコンパスワークを分担しました。1日目のゴールには予定より少し遅れて到着しましたが、大きなトラブルなく終えることができました。計画通り3時間の睡眠時間を確保し、翌日に備えました。
2日目:蓄積する疲労と判断力の低下
2日目の朝、体には既に疲労感が漂っていました。スタート直後のパドルセクションは順調でしたが、続く山岳トレッキングセクションで課題が顕在化しました。睡眠は取ったものの質が低かったのか、集中力が散漫になり始め、ナビゲーションに微細なズレが生じ始めました。特に、等高線の緩やかな変化や、地形の細かな特徴を見落とす場面がありました。
具体的な判断ミスとして、チェックポイント手前で本来たどるべき尾根筋から一つ隣の尾根に進んでしまい、約30分のロストが発生しました。疲労により地形の判断が甘くなったこと、そしてチーム内での地図・コンパスのダブルチェックが疎かになったことが原因です。このロストで精神的な焦りが生じ、その後のペース配分にも影響しました。
チーム連携においては、疲労からか会話が減り、お互いの状況確認や意見交換が滞りがちになりました。意識的に声かけを増やし、休憩時には必ずその時点での状況(体力、補給、ナビゲーションの確認)を共有するように努めました。特に、疲労困憊しているメンバーには積極的に声をかけ、励まし合うことが重要でした。
装備面では、夜間の冷え込みに対応するためのレイヤリングは機能しましたが、雨に濡れたウェアが完全に乾かず、保温性が若干低下する問題がありました。また、終盤では特定の補給食(ジェル)に飽きが生じ、十分なカロリー摂取が困難になる場面がありました。
3日目:終盤の粘りと学び
3日目は、これまでの疲労がピークに達していました。特に朝方は体が重く、動き出しが鈍かったです。しかし、フィニッシュが近づいているという精神的な支えと、チームメイトの存在が大きな力となりました。
ナビゲーションは依然として油断できませんでしたが、2日目の反省を活かし、些細な地形の変化も見落とさないよう、より頻繁に地図とコンパスを確認しました。チーム内での声出し確認も徹底しました。
終盤のバイクセクションでは、登りでペースが上がらず苦労しましたが、チームで励まし合いながら一歩一歩(一漕ぎ一漕ぎ)進みました。フィニッシュラインが見えた時の達成感は格別でした。
詳細な振り返りと分析:成功と失敗から導き出す学び
サンライズバレー3日間アドベンチャーを終えて、多くの学びがありました。
- 成功要因:
- レース前の計画段階で、複数日レースにおける睡眠の重要性を認識し、具体的な時間を計画に組み込んだこと。結果的に計画通りの時間は確保できませんでしたが、意識があったことで最低限の休息は取れました。
- 悪天候に対応できるウェアのレイヤリング準備。濡れても保温性を保つ化繊ミッドレイヤーの選択は正解でした。
- チーム内での定期的な状況確認と声かけを意識したこと。特に疲労が蓄積した2日目以降、互いを支え合う上で非常に重要でした。
- 失敗要因:
- 計画した睡眠時間を確保できなかったこと、そしてその質が低かったこと。これが2日目以降の判断力低下の最大の要因でした。疲労による集中力不足が、ナビゲーションミスやペース配分の乱れに直結しました。
- 疲労困憊時における地形判断の甘さ。細かい地形の特徴(等高線の間隔、小さな沢や岩のマークなど)を見落としやすくなりました。
- 補給食の種類の偏り。後半に特定の味に飽きてしまい、必要量の摂取が難しくなりました。
- 夜間の冷え込みと雨によるウェアの湿り。完全に乾かせない状況での保温性維持に課題が残りました。
これらの経験から、読者の皆様への学びとして強調したい点は、複数日レースにおける「疲労マネジメントは、体力だけでなく判断力に直結する」ということです。特に睡眠不足は、ナビゲーションミスやリスクの高い判断を引き起こす可能性を高めます。また、疲労が蓄積するとチーム内のコミュニケーションも滞りがちになりますが、意識的な声かけや状況共有が、困難を乗り越える上で不可欠です。
装備レビュー:複数日レースで役立った・課題が見つかったアイテム
今回のレースで使用した装備の中から、特に印象に残ったものをレビューします。
- バックパック(オスプレイ エクソス 28): 軽さとフィット感が非常に優れており、3日間の行動中、揺れによるストレスをほとんど感じませんでした。通気性も高く、背中の蒸れを軽減してくれました。ただし、拡張性はあまり高くないため、容量ギリギリになるとパッキングに工夫が必要でした。
- ヘッドライト(ペツル ナオ+): 高出力で遠くまで照射できるため、夜間のトレイルやナビゲーションで絶大な安心感がありました。リアクティブライティング機能は、バッテリー消費を抑えつつ適切な光量を提供してくれましたが、バッテリー持ちを優先し、手動での光量調整も頻繁に行いました。予備バッテリーの携行は必須です。
- ミッドレイヤー(パタゴニア ナノパフフーディ): 濡れても保温性を維持する化繊の恩恵を強く感じました。雨に降られたり、汗で湿ったりしても、冷え切ってしまうことはありませんでした。行動中だけでなく、短い睡眠時の保温着としても活躍しました。複数日レースの必携品と言えるでしょう。
- 補給食(パワージェル各種): エナジー補給には役立ちましたが、3日目には特定の味に飽きてしまい、摂取量が減りました。次回は、甘いものだけでなく、塩味系のものや、固形の補給食(おにぎりやパン)をバランス良く組み合わせる必要性を感じました。
具体的な改善策:次に活かすための行動計画
今回のレース経験を踏まえ、次に参加する複数日レースに向けて、以下の具体的な改善策を実行に移します。
- 睡眠戦略の見直しと実践:
- レース前に、短時間の睡眠(例えば2時間程度)を取った後に活動するシミュレーション練習を行います。
- 睡眠時間を確保するための具体的な行動計画(トランジションでの準備時間、寝床の設営方法の効率化など)をチームで再度検討します。
- 短い時間でも質の高い睡眠を取るための工夫(耳栓、アイマスクの使用、適切な寝具の選定など)を試します。
- 疲労下でのナビゲーション練習:
- 疲労が蓄積した状況を模倣し(例えば、軽い運動後に睡眠時間を削ってから)、夜間や早朝にナビゲーション練習を行います。
- 地形図の読み込み精度を高めるため、等高線や地形の特徴から現在地を特定する練習を意識的に繰り返します。
- チーム内での地図・コンパスのダブルチェック、そして地形と地図の照合作業を、疲労時でも徹底するルールを設けます。
- 補給戦略の多様化:
- 行動食として、ジェルやバーだけでなく、おにぎり、パン、ゼリー、フリーズドライ食品など、多様な種類と味を用意します。
- 胃腸への負担を考慮し、消化しやすいものと、しっかりとしたエネルギーになるものをバランス良く組み合わせます。
- レース前に、実際に長時間行動しながら様々な補給食を試食し、体に合うもの、飽きにくいものを選定します。
- チーム内コミュニケーションの強化:
- 疲労が蓄積しても、定期的にお互いの体力、精神状態、補給状況、そしてナビゲーションに関する確認を声に出して行う習慣を身につける練習をします。
- 困難な状況下でもポジティブな声かけを心がける練習を行います。
まとめ:疲労と向き合い、成長する
サンライズバレー3日間アドベンチャーは、複数日レースの厳しさと、そこで問われる総合力を改めて痛感させられるレースでした。特に、疲労が判断力に及ぼす影響は想像以上に大きく、事前の計画やチーム連携がそれをどこまでカバーできるかが鍵となります。
今回の経験で得られた失敗からの学びは、今後のレース活動において非常に価値のあるものです。これらの具体的な改善策を着実に実行に移し、疲労というアドベンチャーレースの避けて通れない要素とより賢く向き合い、パフォーマンスの向上に繋げていきたいと考えています。
アドベンチャーレースは体力だけでなく、知力、判断力、そしてチーム力全てが試される奥深い競技です。私自身のレースログが、読者の皆様が自身の課題解決やスキルアップに繋がる一助となれば幸いです。