ロックガーデンエンデュランス レースレポート:悪路でのバイク搬送判断とチームの総合力維持
「私のレースログ」をご覧いただき、ありがとうございます。この記事では、先日参加いたしました「ロックガーデンエンデュランス」というアドベンチャーレースに関するレポートと、そこから得られた学びについて詳細にご報告いたします。
この大会は、山間部の多様な地形を舞台に、トレッキング、バイク、ナビゲーションを組み合わせた形式で行われました。特に、コース中盤に設定された約5kmの「ロックガーデン」と呼ばれるセクションは、名前の通り大きな岩や倒木が多く、バイクでの通過が極めて困難な、このレースの大きな特徴となっていました。この記事では、このロックガーデンセクションにおける私たちチームの判断、行動、そしてそこから得られた具体的な教訓に焦点を当てて記述いたします。
参加者の多くが数年の経験を持つ中堅層であるこのレースにおいて、目標タイム達成や特定のスキル向上に課題を感じていらっしゃる読者の皆様にとって、私たちの成功や失敗の経験が、自身のレース活動における具体的なヒントとなれば幸いです。
レース前の準備:悪路セクションへの戦略と装備選択
ロックガーデンエンデュランスへの参加を決めた際、レースの情報を得る中で、コース中盤のロックガーデンセクションの存在は事前に把握しておりました。過去の参加者の声からは、「バイクに乗れる区間はほとんどない」「バイクを担いでの移動が中心になる」といった情報が多く聞かれ、このセクションがレース全体の所要時間に大きく影響すると予想していました。
私たちのチームでは、このセクションに対する戦略として、以下の点を事前に話し合いました。
- バイクでの走行は最小限に留める: 無理な走行は落車やバイクの破損に繋がりやすいため、危険を感じたらすぐにバイクから降りる。
- 押すか担ぐかの判断基準: 地形に応じて柔軟に判断する。比較的平坦ながら岩が多い区間は押し、大きな段差や急斜面、倒木が密集する区間は担ぐことを基本とする。
- チームでの連携: 疲労困憊したメンバーのバイクを他のメンバーがサポートする体制をとる。声をかけ合い、ペースを維持する。
これらの戦略に基づき、装備面では以下の準備を行いました。
- バイク: 悪路でのグリップを重視し、ブロックパターンが深く太めのタイヤを選択しました。また、パンクのリスクを考慮し、チューブレスタイヤにシーラント剤を多めに充填しました。
- バックパック: バイクを担いだ際に背負うことを想定し、ある程度の容量がありながらも体にしっかりとフィットし、肩への負担が分散されるものを選びました。
- バイク担ぎ用ストラップ: 市販のバックパックに装着できるタイプのバイク担ぎ用ストラップを準備しました。これにより、バイクを担ぐ際に手だけでなく肩でも支えられると考えました。
レースに向けた具体的な練習としては、普段のトレイルライドに加え、意図的に岩場や階段が含まれる区間を選んでバイクを押したり担いだりする練習も短時間ではありますが実施しました。これにより、装備のフィット感や体力的な負荷をある程度確認できたことは、その後のレースでの判断に役立ちました。
レース中の詳細:ロックガーデンセクションでの格闘
レースは順調にスタートし、序盤のトレッキングと比較的走りやすいバイクセクションを計画通りのペースでクリアしました。そしていよいよ、このレースの核心とも言えるロックガーデンセクションに差し掛かりました。
セクションに入ってまず感じたのは、事前の情報収集で想像していた以上に地形が複雑で荒れているということでした。大きな岩が散乱し、路面は不安定で、至るところに倒木が道を塞いでいました。
- 初期判断と状況変化: セクションの入り口付近では、まだ比較的バイクに乗れる区間もあると期待していましたが、すぐにその考えは改めざるを得ませんでした。わずかに乗れたとしても、すぐにバランスを崩しそうになり、降りて押す方がはるかに安全で効率的だと判断しました。
- 押すか担ぐかの具体的な判断: 押し始めてからも困難は続きました。大きな岩を乗り越えたり、狭い隙間をすり抜けたりする場面では、バイクをコントロールしながら進むのが非常に難しく、チームの進行速度は大幅に低下しました。特に大きな倒木や、膝丈ほどの段差が続く区間では、バイクを押して進むことが不可能になり、事前に準備していた担ぎ用ストラップを使ってバイクを担ぎました。この「押す」から「担ぐ」への切り替えは、地形の変化に応じて頻繁に行われました。少しでも担ぎやすい場所を見つけたらすぐにバイクを担ぎ、再び押しやすい地形になったらバイクを下ろす、という判断をチーム内で声かけしながら行いました。
- チーム連携の事例: 担ぎや押しが続く中で、メンバーの疲労度は急速に高まりました。特にバイクの重量が負担となる場面が多く、メンバー間で「少し交代しようか」「ここはこの担ぎ方の方が楽だよ」といった具体的な声かけを行いました。最も困難な区間では、一人が自身のバイクを押しつつ、もう一人が別のメンバーのバイクを引っ張る・支えるといった物理的なサポートも行いました。定期的に短い休憩を取り、水分と補給食を摂取することも意識しました。
- 装備の使用感: 事前に選んだ太めのタイヤは、押し歩きやわずかに乗れた区間での安定感に貢献しました。パンクも発生しませんでした。バイク担ぎ用ストラップは、一時的に両手を空けたり、特定の筋肉への負担を減らしたりするのに有効でしたが、長時間使用すると肩への集中する負担は避けられませんでした。バックパックは体にフィットしていましたが、それでも重いバイクを担ぐ動作は、普段使わない筋肉に強い負荷を与えている実感がありました。
このロックガーデンセクションの通過には、事前の見積もりよりも大幅に時間を要しました。しかし、チーム全員で協力し、互いを励まし合いながら、大きなトラブルなくセクションを突破することができました。他のチームの中には、無理な走行でバイクを破損させていたり、メンバー間の連携に課題を抱えている様子も見受けられ、私たちのチーム連携の有効性を再認識する機会となりました。
詳細な振り返りと分析:成功と失敗の要因
レース全体を振り返り、特にロックガーデンセクションにおける私たちの成功要因と失敗要因を分析します。
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成功要因:
- 状況に応じた素早い判断切り替え: ロックガーデンに入ってすぐに、無理な走行は避けるという判断を徹底し、押す・担ぐへと速やかに移行できたことは、その後のトラブル回避に繋がりました。
- チーム内での活発なコミュニケーションと相互サポート: 困難な状況下でも声かけを怠らず、お互いの疲労度を把握し、具体的なサポート(バイクを持つ、声援を送る)を実行できたことが、チームの士気を維持し、全員でセクションを突破できた最大の要因です。
- 事前のバイク担ぎ・押し練習: 短時間ではありましたが、事前に悪路でのバイク搬送を経験していたことで、実際の状況に対する心構えや、装備の使用感が確認できていたことは有効でした。
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失敗要因:
- 悪路の難易度予測の甘さ: 事前の情報収集は行ったものの、実際に直面した地形の複雑さや困難度は想像以上でした。これにより、このセクションに要する時間や、体力の消耗度に対する見積もりが甘かったと言えます。
- バイク担ぎに特化した体力・技術不足: 事前練習は行ったものの、長距離・長時間にわたるバイク担ぎ・押しに耐えうる特定の筋肉(肩、背中、腕)の強化が不足していました。また、効率的なバイクの担ぎ方や、チームとしてバイクを連携して運ぶ技術についても、改善の余地がありました。
- 交代でのバイク搬送体制の不徹底: 困難な区間では交代で重いバイクを持つなどの連携を試みましたが、疲労困憊の中で体系的なローテーションや役割分担が十分に機能しなかった場面がありました。
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読者への学び:
- 未知のセクション、特に悪路や特定の困難が予想される区間については、可能な限りの情報収集を行い、想定される最悪のシナリオも考慮した準備が必要です。
- レース中の判断は、事前の計画だけでなく、実際の状況に応じて柔軟に変更する勇気と判断力が必要です。特に危険が伴う場面では、速度よりも安全と確実性を優先する判断が長期的には有利に働くことが多いです。
- アドベンチャーレース、特に困難なセクションにおいては、チーム連携が最も重要なスキルの一つです。物理的なサポートはもちろん、精神的な支え合いや、お互いの状況を把握し合いながら行動することが、チーム全体のパフォーマンスを向上させます。
- 特定のスキル(今回の場合はバイクの押し・担ぎ)が要求されるセクションがある場合は、そのスキルに特化した練習や体作りを事前に行うことが、レース中の消耗を抑え、その後のセクションへの体力を温存するために不可欠です。
装備レビュー:ロックガーデンセクションで活躍(あるいは課題となった)ギア
このレース、特にロックガーデンセクションで印象に残った装備についてレビューします。
- マウンテンバイク用タイヤ(メーカーA、モデルB): 深いブロックパターンが特徴のこのタイヤは、濡れた岩や木の根の上でも比較的安定したグリップを提供してくれました。押し歩きや、わずかに乗れた区間での安心感に繋がりました。想定外の悪路でしたが、パンクなくクリアできた点は高く評価できます。ただし、平坦な舗装路や簡単なトレイルでは転がり抵抗が大きくなるため、コース全体のサーフェスバランスを考慮した選択が重要だと感じます。
- バイク担ぎ用ストラップ(メーカーC): バックパックに装着して使用するこのストラップは、バイクを肩で支えることを可能にし、腕の負担を軽減してくれました。特に急斜面を登る際に有効でした。しかし、長時間の使用ではストラップが肩に食い込み、痛みを感じることもありました。また、バイクを安定させるためには結局手である程度支える必要があり、完全に両手をフリーにできるわけではありませんでした。より身体にフィットし、荷重分散に優れた専用設計のバイク担ぎ用バックパックやハーネスの検討も必要かもしれません。
- バックパック(メーカーD、モデルE): 容量は適切でしたが、バイクを担いだ際に肩周りのフィット感に若干の課題を感じました。ショルダーストラップやウェストベルトの調整だけでは、重いバイクの荷重を分散させきれず、肩や僧帽筋に大きな負担がかかりました。今後は、バイク担ぎを想定した際に、肩への負担を最小限に抑えるためのフィッティングや、より堅牢なフレーム構造を持つモデルの検討も視野に入れたいと思います。
具体的な改善策:次のレースに向けて
今回のロックガーデンエンデュランスでの経験を踏まえ、次に同様の悪路を含むレースに臨む、あるいはチームの総合力向上を目指すために、以下の具体的な改善策を実行に移す計画です。
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悪路特化型トレーニングの導入:
- バイク担ぎ・押し練習の強化: 実際にバイクを担いで急斜面や階段を昇降する練習を、チームメンバーと共に行います。これにより、効率的な担ぎ方、チームでの連携した搬送方法を習得し、特定の筋肉群の強化を図ります。
- 体幹・上半身の補強: バイク担ぎや悪路でのバイクコントロールには、体幹と上半身の筋力・持久力が不可欠です。ジムでのウェイトトレーニングや、自重トレーニング(プッシュアップ、プルアップなど)を取り入れ、集中的に強化します。
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情報収集と地形予測能力の向上:
- レース前に公開される情報を最大限に活用し、地形図や過去のレース写真、動画などを丹念に分析します。特に困難が予想されるセクションについては、地形の特徴(岩の大きさ、斜度、植生など)から、必要となるスキルや想定される所要時間をより正確に見積もる練習を行います。
- 可能であれば、試走が可能な区間については実際に足を運び、地形を確認します。
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チーム連携プロトコルの改善:
- 困難なセクションに差し掛かる前に、チーム内で改めて役割分担や連携方法を確認する時間を設けます。例えば、誰が先行してルートを確認するか、バイク搬送時にどのようにサポートし合うか、休憩のタイミングなどを具体的に決めます。
- 疲労困憊時でも簡潔かつ効果的に情報伝達できる、短い合図やキーワードを事前にチームで共有します。
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装備の見直しと最適化:
- 今回の経験を基に、バイク担ぎ時の負担を軽減できるバックパックや、より特化したバイク搬送ギアの情報を収集し、次回のレースに向けて準備を進めます。
- タイヤ選択については、コース全体のバランスを見つつも、最も困難が予想されるセクションに対応できる選択肢を常に考慮に入れます。
まとめ
ロックガーデンエンデュランスは、私にとって悪路におけるバイク搬送スキル、そして何よりもチームとしての総合力が試される非常に学びの多いレースとなりました。計画通りに進まない困難なセクションに直面した際に、どのように状況を判断し、チームで連携して乗り越えるか。この経験は、今後のアドベンチャーレース活動における重要な指針となります。
今回のレポートが、悪路セクションやチーム連携に課題を感じている読者の皆様にとって、具体的な改善への一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。アドベンチャーレースは常に新たな挑戦と学びを提供してくれます。今回の経験を活かし、次なるレースに向けてさらに成長していきたいと考えております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。