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ミストフォレストアドベンチャー レースレポート:雨天・低体温リスク下における判断の検証と次への対策

Tags: アドベンチャーレース, レースレポート, 雨天, 低体温, 判断, ナビゲーション, 装備

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今回は、先日参加した「ミストフォレストアドベンチャー」のレースレポートをお届けします。このレースは、変化に富む山間部の地形を舞台にした約30時間のロングレースでした。特に印象に残っているのは、レース中盤から終盤にかけて遭遇した断続的な雨と、それに伴う低体温リスクが高まった状況です。

この記事では、そのような厳しい環境下でチームがどのような判断を行い、それがどのようにレースに影響したのかを詳細に振り返ります。単なる体験談としてではなく、悪天候下での体力・精神マネジメント、装備選択、そして判断プロセスについて、読者の皆様自身のレース活動に活かせる具体的な学びや示唆を提供できれば幸いです。

レース前の準備:雨天予報と装備戦略

ミストフォレストアドベンチャーの数日前から、レース期間中の天候は雨の予報が示されていました。特に山間部では気温も低くなることが予想され、低体温症のリスクを十分に考慮する必要がありました。

これを受けて、レース前の準備では、雨天・低温対策を重点的に行いました。ウェアリングについては、ベースレイヤー、ミッドレイヤーに加え、防水透湿性の高いレインウェア上下を必携としました。さらに、休憩時や緊急時を想定し、軽量な化繊ダウンジャケットも用意しました。グローブとキャップも複数用意し、濡れたら交換できるよう計画しました。

装備面では、地図やコンパス、行動食などを濡らさないための防水対策を強化しました。スタッフサックは複数サイズを用意し、バッグパック内でのパッキングを工夫しました。また、低体温の初期症状を感知しやすくするため、意識的にチーム内で体調の確認を頻繁に行うことも事前に話し合いました。

補給戦略については、寒さで行動食が固くなる可能性を考慮し、ジェルタイプやゼリータイプを多めに用意しました。温かい飲み物を持参することも検討しましたが、重量増加を避けるため、今回は見送る判断をしました。この判断が後にどう影響したのかは、レース中の詳細で触れたいと思います。

レース中の詳細:雨と寒さの中での判断

スタート直後は曇り空のもと、計画通りのペースで進みました。最初のトレッキングセクションは比較的順調で、ナビゲーションも問題なくクリアしました。しかし、レース開始から約5時間経過した頃、予報通りに雨が降り始めました。最初は小雨でしたが、徐々に強さを増し、気温も低下傾向を示しました。

雨天・低体温リスク下での具体的な判断事例:

  1. ウェアリングの判断:

    • 状況: 雨が降り始めた当初、気温はまだそれほど低くなかったため、レインジャケットのみを着用し、行動を続けました。しかし、1時間ほど経過すると、雨脚が強まり、風も出てきたため、体感温度が急速に低下しました。
    • 判断: このままでは体温を奪われると判断し、次のチェックポイント(CP)までの約1kmの間に立ち止まり、レインパンツも着用し、濡れていない予備のグローブに交換しました。
    • 結果: 約5分のタイムロスはありましたが、全身を覆うことで体温低下を防ぎ、その後のセクションでのパフォーマンス維持に繋がりました。初期段階で適切な対応ができたことは、後々の大きなトラブルを防ぐ上で重要だったと考えています。
  2. ナビゲーション判断:視界不良と地図の湿潤:

    • 状況: 雨と霧により視界が悪化し、遠方の地形目標(ピーク、稜線)が確認しづらくなりました。さらに、防水対策を施していたものの、地図が湿気を帯び始め、折りたたんだ部分が破れやすくなりました。
    • 判断: 広範囲の地形を把握するのが困難になったため、より近距離の明確な地物(小沢の出合い、岩、植生の変化)をピンポイントで確認しながら進む、より慎重なナビゲーションに切り替えました。地図の取り扱いも一層丁寧に行い、頻繁な開閉を避けました。また、チーム内で地図を持つ担当を固定し、破損リスクを減らす工夫をしました。
    • 結果: ペースは若干落ちましたが、大きなナビゲーションミスをすることなく、予定ルートを維持できました。地図の破損も最小限に抑えられました。視界が悪い中でも冷静に近距離の地物を活用できたことは、この状況下での成功要因でした。
  3. 休憩と補給の判断:寒さの中での意思決定:

    • 状況: 夜間になり、雨は弱まりましたが気温はさらに低下しました。長時間行動による疲労も蓄積し、チームメンバーの一人が軽度の震えを訴え始めました。
    • 判断: このまま行動を続けるのは危険だと判断し、予定していた休憩ポイントよりも手前で立ち止まることを決めました。比較的風を避けられる岩陰を見つけ、そこでレインウェアの上に化繊ダウンジャケットを重ね着させ、温かい飲み物(この時は持っていませんでしたが、仲間の行動食に含まれていた温かいスープを利用)を摂らせました。休憩時間は当初計画より長めの20分と設定しました。
    • 結果: 短時間でしたが、しっかりと体を温め、カロリーを摂取することで、メンバーの体調は回復し、その後の行動を続けることが可能となりました。この判断は、レースタイムを優先せず、チームメンバーの安全と長期的なパフォーマンス維持を最優先した結果であり、困難な状況でのチーム連携の好例だったと考えています。温かい飲み物を持参しなかったことへの反省は、この時に強く感じました。
  4. ルート選択判断:滑落リスクと安全確保:

    • 状況: ある急斜面の下りルートに到達しましたが、雨によって地面が非常に滑りやすくなっていることが分かりました。計画していたルートは最短でしたが、滑落のリスクが高いと判断しました。
    • 判断: 短距離のタイム短縮よりも、安全を確保することを優先し、距離は長くなりますが、傾斜が緩やかで安全性の高い代替ルートを選択しました。チーム内で状況を共有し、全員の同意を得てからルート変更を実行しました。
    • 結果: 約15分のタイムロスが発生しましたが、転倒や怪我なく安全に斜面を下ることができました。特に夜間帯であったため、無理なルート選択は重大な事故に繋がりかねませんでした。リスク評価と安全優先の判断が功を奏したと言えます。

詳細な振り返りと分析

今回のミストフォレストアドベンチャーは、雨と寒さという厳しい条件下での経験となりました。このレースを通して、成功要因と失敗要因、そして次への具体的な学びを深く分析することができました。

成功要因:

失敗要因:

読者への学び:

具体的な改善策

今回のレース経験を踏まえ、次のアドベンチャーレースに向けて以下の具体的な改善策を実行に移したいと考えています。

  1. 温かい飲み物と簡便な調理器具の導入検討: 軽量なサーモスや、お湯を沸かせる小型バーナーと燃料(または固形燃料)を持参することを検討します。これにより、休憩時に温かい飲み物やスープを摂ることができ、体温回復や精神的なリフレッシュに繋がると考えられます。
  2. 地図の防水対策の強化: 地図は複数枚用意し、それぞれを完全防水のマップケースに入れる、または防水性の高い特殊紙に印刷することを検討します。また、予備のコピーを濡れないバッグパックの奥深くに保管するなどの対策も強化します。
  3. 寒冷時対応のグローブと補給食の工夫: 指先までしっかりと機能する、より防寒性の高いグローブや、インナーグローブとの重ね付けを練習します。また、手が冷えても開封しやすい、または一口で食べられるような形状の行動食を優先的に準備することを検討します。
  4. 雨天・寒冷時のチーム練習: 実際の雨天や気温の低い状況で、装備の操作性やチーム内のコミュニケーション、ナビゲーション精度を確認する練習を行います。これにより、レース本番で冷静な判断ができるように、悪条件下での行動に慣れておくことを目指します。
  5. 低体温症に関する知識の深化: 低体温症の初期症状や進行プロセス、そして適切な応急処置について、チーム全員で再度学び直します。レース中に互いの異変に早期に気づき、迅速に対応できるよう知識をアップデートします。

装備レビュー:雨天・防寒対策アイテム

今回のレースで特に重要だった、雨天・防寒対策に関する装備についてレビューします。

まとめ

ミストフォレストアドベンチャーは、予想外の雨と寒さという自然の厳しさを改めて実感するレースとなりました。しかし、その困難な状況下での具体的な判断や、チームメンバーとの連携を通して、多くの学びを得ることができました。

悪天候下でのレースは、装備の準備、体調管理、そして何よりも冷静な判断力が問われます。今回の経験で得た成功と失敗、そしてそこから導き出した具体的な改善策は、今後のレース活動において大きな財産となるでしょう。

このレポートが、悪天候下でのアドベンチャーレースに対する備えや、困難な状況での判断に悩む読者の皆様にとって、少しでも参考になれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。次回の記事もお楽しみに。