私のレースログ

ロングレースにおける休憩・仮眠戦略とその判断への影響:自身の経験と分析

Tags: アドベンチャーレース, 休憩戦略, 仮眠, 疲労管理, 判断力

アドベンチャーレース、特に複数日に及ぶロングレースでは、体力、スキル、チームワークに加え、疲労や眠気といった生理的な課題との向き合い方が非常に重要となります。適切な休憩や仮眠は、パフォーマンスの維持だけでなく、安全なレース遂行、そして何より正確な判断力を保つ上で不可欠です。この記事では、私自身が経験したロングレースを例に、休憩・仮眠に関する戦略、レース中の具体的な判断、そしてそこから得られた学びや改善策について詳細に記述いたします。

レース前の準備:計画した休憩・仮眠戦略

参加したレースは、3日間、総距離約400kmの山岳・森林地帯を主体とするアドベンチャーレースでした。この種のロングレースでは、睡眠時間を全く取らない「ノンストップ」戦略や、計画的に短時間の仮眠を複数回取る戦略など、様々なアプローチがあります。私のチームでは、過去の経験やチームメンバーの特性を踏まえ、以下の戦略を計画しました。

レース中の詳細:具体的な判断とその結果

レースが始まり、計画していた戦略は、現実の状況に応じて刻々と変化していきました。

レース初日夜:最初の仮眠判断

初日後半、バイクセクションからトレッキングセクションへのトランジション地点に到着した頃、既に夜間に入っており、チーム全体の疲労感が募り始めていました。計画ではこの後もしばらく進行し、山中で仮眠を取る可能性も考慮していましたが、トランジションエリアは比較的風が弱く、次のトレッキングセクションのスタート地点でもあるため、ここで仮眠を取るのが効率的ではないかという議論になりました。

レース二日目夜:疲労困憊下のナビゲーションと判断

二日目の夜間、私たちは標高の高い山岳地帯のトレッキングセクションを進んでいました。強い風が吹き付け、気温もかなり低下していました。体力的な疲労に加え、睡眠不足による判断力の低下を感じる時間帯でした。特にナビゲーションにおいて、地形図と実際の地形との照合精度が落ちていることを自覚していました。

装備と補給に関する判断

レース全体を通じて、休憩・仮眠装備の選択は概ね成功でした。軽量なシュラフカバーは、短い仮眠でも体温を保持するのに役立ちました。しかし、補給に関しては反省点がありました。疲労がピークに達した時間帯には、固形食を受け付けにくくなることを予測していましたが、準備したジェルやドリンクだけではカロリーが不足し、ハンガーノック寸前のような状態に陥った時間がありました。これもまた、判断力低下の一因となった可能性があります。

詳細な振り返りと分析

レース全体を振り返ると、休憩・仮眠戦略に関しては、計画通りに進んだ部分と、レース中の状況に応じて変更を余儀なくされた部分がありました。

装備レビュー

具体的な改善策

今回の経験を踏まえ、次のロングレースに向けて以下の具体的な改善策を実行する予定です。

  1. 仮眠計画の柔軟性向上と時間設定の再検討: 仮眠時間は、1回あたり20分〜30分の短時間仮眠(パワーナップ)を複数回挟む戦略を中心に検討します。深い眠りに入りすぎないよう、チーム内で交代でアラームを設定するなど、具体的な運用方法を事前にシミュレーションします。また、休憩・仮眠のタイミングは、セクションやチェックポイントだけでなく、チームメンバーの生理的なサイン(あくび、注意力の低下、会話の減少など)を最優先する判断基準を明確にします。
  2. 疲労困憊時・夜間対応の補給計画見直し: 固形食が摂取しにくい状況を想定し、消化吸収が早く、携行性に優れたジェル、ドリンク、ゼリーなどの液体・半固形補給食の種類と量を増やします。特に、カフェイン入りの補給食を、眠気が強い時間帯に戦略的に投入することを検討します。
  3. チーム内のコミュニケーション強化: 休憩・仮眠に関するシグナル(「少し休憩したい」「眠い」「判断に自信がない」など)を明確に決め、遠慮なく伝え合えるように練習します。また、疲労下での建設的な意思決定プロセス(例えば、全員がOKを出すまでは次に進まないなど)を確立します。
  4. 短時間仮眠の練習: 日常生活の中で、意図的に20分程度の短時間仮眠を取り、その効果や目覚め方を確認する練習を行います。これにより、レース本番での短時間仮眠の質を高めることを目指します。

まとめ

ロングアドベンチャーレースにおける休憩・仮眠戦略は、単に「休む」だけでなく、レース全体のパフォーマンス、特に疲労困憊下での判断力を左右する極めて重要な要素です。今回のレース経験を通じて、事前の計画はもちろん大切ですが、それ以上に、レース中のチームメンバーの状態を正確に把握し、変化する状況に合わせて柔軟かつ迅速に判断を下すことの重要性を痛感しました。特に、適切なタイミングでの戦略的な短時間休憩や、チームで共有する休憩・仮眠判断の基準は、今後のレースでさらに磨きをかけるべき課題です。これらの学びを次に活かし、より安全かつ効果的なレースを展開していくためのステップとしたいと思います。