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アイアンレース レースレポート:トランジション戦略の失敗と終盤の判断力低下への対策

Tags: アドベンチャーレース, レースレポート, トランジション, 睡眠不足, 判断力低下, 改善策

アイアンレース レースレポート:トランジション戦略の失敗と終盤の判断力低下への対策

アドベンチャーレースにおいて、各セクション間の移行であるトランジションエリア(TA)での効率性は、レース全体のタイムに大きく影響します。また、長時間のレースでは睡眠剥奪状態での正確な判断力が求められます。本記事では、先日参加したアイアンレースでの経験を基に、トランジション戦略の失敗と、それに起因する終盤の判断力低下について詳細に振り返り、今後の具体的な改善策を考察します。このレポートが、読者の皆様のレース準備や戦略立案に役立つ情報となれば幸いです。

レース前の準備:戦略と目標、装備選択

アイアンレースは、約48時間かけて複数のセクション(トレッキング、バイク、パドル)を繋ぎ、チームで指定されたコントロールポイント(CP)を回るフォーマットでした。私たちのチームの目標は、制限時間内での全CP獲得と、これまでのチームベストタイム更新でした。

レース戦略としては、各セクションで可能な限りペースを維持しつつ、特にトランジションでの滞在時間を最小限に抑えることに重点を置きました。TAでの作業を事前にリストアップし、誰が何を担当するか、どのバッグのどこに何を入れるかを細かく計画しました。装備選択においては、TAバッグの中身をすぐに取り出せるよう、小分けポーチを活用するなどの工夫を凝らしました。

しかし、このトランジション計画には、実際の疲労度や判断力低下への考慮が不足していたことに、レース中に気づかされました。

レース中の詳細:具体的な判断と行動

スタート〜トランジション1 (TA1)

レースは順調にスタートし、最初のトレッキングセクションでは、事前のナビゲーション計画通りにスムーズにCPを獲得しました。チームのペースも安定しており、予定通りの時間でTA1に到着しました。TA1はトレッキングからバイクへの移行でした。

TA1では、計画に基づき迅速にバイク装備への変更、補給食の補充、次のセクションの地図確認を行いました。しかし、計画に忠実になるあまり、「迅速に」という意識が先行し、一つ一つの作業確認が疎かになりました。例えば、バイクシューズの締め具合の確認が不十分であったり、補給食のパッキング方法が雑になったりといった点です。また、次のセクションの地図をバッグの定位置ではなく、一時的に別の場所に入れたことも、後続のセクションで小さな時間のロスに繋がりました。

このTA1での滞在時間は目標通りに収まりましたが、その後のセクションでTA1での小さなミスが影響を及ぼし始めました。

トランジション1〜トランジション2 (TA2)

バイクセクションは比較的平坦で、チームは順調に進みました。TA1で詰め込んだ補給食は、後で取り出す際に手間取ることがありましたが、大きな問題にはなりませんでした。しかし、レース時間が経過し、徐々に疲労が蓄積してくると、TA1での小さな確認不足がボディブローのように効いてきました。例えば、バイクウェアの下に着ていたベースレイヤーが、TA1での着替えの際に少しずれたままになっており、長時間走行中に軽い擦れの原因となりました。

TA2はバイクからパドルへの移行でした。到着時には既に夜間となり、チームには疲労の色が見え始めていました。TA1での反省から、今回は少し落ち着いて作業しようと意識しましたが、夜間と疲労の影響で、さらに判断力や集中力が低下していました。パドル用の装備(PFD、パドル、ライト類)への変更はできましたが、ここで次のパドルセクションのルートや要注意箇所について、チーム間で十分なすり合わせを行う時間が取れませんでした。また、予備のライトバッテリーの確認を忘れるというミスも犯しました。

トランジション2〜フィニッシュ

パドルセクションに入ると、TA2でのコミュニケーション不足が顕在化しました。特に夜間の水上ナビゲーションは難易度が高く、事前に共有できていなかった些細な情報(例:特定の地形をどのように避けるか)が判断を鈍らせました。また、予備バッテリーの未確認が響き、ライトの光量が終盤に低下し、これもナビゲーションに影響しました。

レース終盤のトレッキングセクションでは、睡眠剥奪による疲労がピークに達しました。ルート選択やCPへのアプローチにおいて、通常では考えられないような簡単なミスを犯し、無駄なアップダウンを繰り返したり、藪漕ぎに時間を要したりしました。チーム内のコミュニケーションも、疲労からか感情的になりがちで、冷静な判断を妨げました。特定のCPでルート選択に迷った際、チーム内で意見が割れましたが、疲労により論理的な議論ができず、最終的に直感的な判断に頼ってしまい、それが誤りであったこともありました。

これらの終盤での判断ミスや時間のロスが響き、目標としていたチームベストタイム更新は達成できませんでした。制限時間内にはフィニッシュできたものの、多くの課題が浮き彫りとなりました。

詳細な振り返りと分析

今回のアイアンレースを振り返り、成功要因と失敗要因を分析します。

成功要因

失敗要因

読者への学び

今回の経験から、以下の点が特に重要であると学びました。

装備レビュー

今回のレースで使用した装備の中から、特にトランジションや終盤の行動に関わるものをいくつかレビューします。

具体的な改善策

今回のレースの反省を踏まえ、次のレースに向けて以下の具体的な改善策を実行する予定です。

  1. トランジション手順のマニュアル化とシミュレーション: 各TAでの作業内容、担当、使用する装備、確認事項を詳細なリスト(マニュアル)として作成します。レース前には、このマニュアルを見ながら実際に装備を展開・収納するシミュレーション練習を行い、身体に手順を覚え込ませます。特に疲労が溜まっている状態を想定し、夜間に練習することも検討します。
  2. 睡眠剥奪下での判断ミスのリスク低減:
    • 重要判断チェックリストの作成: ナビゲーションの要所、TAでの最終確認、体調判断など、重要な判断を下す前に確認すべき事項をリスト化し、疲労時でもこれを確認する習慣をつけます。
    • チーム内のダブルチェック体制強化: 特にナビゲーションや装備確認など、ミスが致命的になる作業については、疲労の少ないメンバーや役割を決めてダブルチェックを行います。
    • 計画的な仮眠の検討: レース展開や体調にもよりますが、可能な区間で計画的な短時間の仮眠を導入することを検討します。
  3. 疲労困憊時のコミュニケーション練習: チーム練習の際に、あえて疲労困憊に近い状況を作り出し、冷静に意見を伝え、建設的に議論する練習を行います。事前に「疲れていても相手の意見を最後まで聞く」「短い言葉で要点を伝える」といった簡単なルールを定めておきます。
  4. 装備の収納位置と確認手順の見直し: TAバッグや行動中のバッグへの装備収納位置をさらに最適化し、反射的に取り出せるようにします。また、重要な装備(ライト、バッテリー、ファーストエイドキットなど)については、TA出発前の最終確認リストに追加します。

まとめ

アイアンレースでは、トランジション戦略の不備と睡眠剥奪下での判断力低下が、チームのパフォーマンスに大きく影響しました。タイム短縮を目指す上で、個々の走力やナビゲーションスキルだけでなく、トランジションの「正確性」、そして長時間・睡眠不足という特殊な状況下での「冷静な判断力」がいかに重要であるかを痛感しました。

今回の失敗を貴重な学びとし、トランジション手順のマニュアル化、睡眠剥奪下での判断ミス対策、そして疲労困憊時のチームコミュニケーション強化といった具体的な改善策を愚直に進めていきます。これらの取り組みが、次なるレースでの目標達成に繋がることを期待しています。アドベンチャーレースに取り組む皆様にとって、本レポートが何らかの示唆となれば幸いです。