消化器系トラブルが示した補給と体調管理の落とし穴:サザンクロスアドベンチャー詳細レポート
はじめに
サザンクロスアドベンチャーは、変化に富む地形と、長時間の行動が求められるタフなアドベンチャーレースでした。私たちチームは、完走はもちろんのこと、設定した目標タイム内でのフィニッシュを目指し、綿密な準備を進めてレースに臨みました。しかし、レース中盤、予期せぬ消化器系のトラブルに見舞われ、計画の変更を余儀なくされました。
この記事では、サザンクロスアドベンチャーでの私の経験を詳細にレポートし、特にレース中に発生した消化器系トラブルに焦点を当て、その原因、対応、そしてそこから得られた具体的な学びと改善策について深く掘り下げて分析します。この経験が、読者の皆様のレース活動における体調管理や補給戦略の参考になれば幸いです。
レース前の準備:計画と意図
サザンクロスアドベンチャーは、トレッキング、バイク、パドルセクションがバランス良く配置されたロングレースであり、体力、ナビゲーション、そしてチームワークが試される大会です。私たちは、過去のレース経験から得た教訓を活かし、以下の点を重点的に準備しました。
- 戦略・目標: 中盤以降の疲労によるペース低下を見込み、序盤の貯金と終盤の粘りを両立させるペース配分を計画しました。目標タイムは完走に加え、上位一定の順位を目指す設定としました。
- ナビゲーション: 事前のルート研究に時間をかけ、特に夜間や疲労困憊時でも判断できるよう、特徴的な地形や分岐点をチームで共有しました。難しいセクションは複数のルート案を検討しました。
- 装備選択: 長時間行動における快適性と機能性を重視し、特にシューズ、バックパックは念入りに試着・調整を行いました。ヘッドライトは複数所持し、予備バッテリーも十分に準備しました。補給食は、エネルギー源としてジェル、固形物(エナジーバー、おにぎりなど)、電解質タブレットなど多様な種類を用意し、レース展開に合わせて使い分ける計画でした。消化器への負担を考慮し、レース前に複数回のロングトレーニングで様々な種類の補給食を試しました。
- 補給戦略: 1時間あたりの目標摂取カロリーと水分量を設定し、それをベースに各トランジションでの補給計画を立てました。固形物は休憩時に、ジェルは行動中にとるなど、消化の負担を減らす工夫も意識していました。特に、新しい種類のジェルもいくつか試用し、問題がないことを確認した上で採用しました。
- 体調調整: レース前一週間は炭水化物を多めに摂取するカーボローディングを実施し、睡眠時間も十分に確保しました。直前には消化の良い食事を心がけました。
レース中の詳細:予期せぬ事態と対応
序盤(トレッキング・バイク): スタート直後から、チームは計画通りのペースで進みました。トレッキングセクションでは、事前のルート研究が功を奏し、スムーズにチェックポイント(CP)を通過しました。ナビゲーション判断に迷う場面も少なく、チーム間のコミュニケーションも円滑でした。バイクセクションに入っても、体力的には余裕があり、予定通りのペースを維持しました。補給も計画通りに進め、定期的にジェルや固形物を摂取し、水分補給も怠りませんでした。この段階では、特に体調に異変を感じることはありませんでした。使用したシューズやバイクウェアも快適で、装備に関する問題は発生しませんでした。
中盤(パドル・トレッキングへの移行):体調異変の発生 パドルセクションを終え、次のトレッキングセクションに入った頃、体調に異変を感じ始めました。まず、胃の不快感があり、その後軽い吐き気と腹痛が現れました。パドルセクションは比較的穏やかなコンディションでしたが、一定の体幹負荷と、長時間同じ体勢で補給を続けたことが影響したのかもしれません。
異変を感じた当初は、一時的なものと考え、ペースを維持しようとしましたが、症状は徐々に悪化しました。特に、補給食を受け付けなくなり、水分を摂るのも辛い状況になりました。計画していた補給ができなくなったことは、その後の体力維持に大きな不安をもたらしました。
トラブル発生時の対応: チームメイトに体調不良を伝え、ペースを落としました。この時の判断として重要だったのは、無理に計画通りの補給を続けず、一旦中断したことです。無理に摂り続けると、さらに症状が悪化する可能性が高いと考えました。チームメイトは私の状況を理解し、私の荷物を分担して持ってくれたり、励ましの言葉をかけてくれたりしました。この時のチームのサポートは非常に心強く、精神的に支えられました。
ナビゲーションに関しては、体調が万全でない状態では判断力が低下する可能性があるため、チームメイトに主体的にナビゲーションを任せました。私は地図を確認する補助に回り、簡単な地形判断や方向確認に集中しました。使用している地図やコンパスは問題なく機能していましたが、集中力の低下がツールの有効活用を妨げる側面がありました。
終盤(バイク):体調回復とペース調整 トレッキングセクション終盤から、幸いにも症状は徐々に落ち着き始めました。しかし、補給が十分にできていなかったため、体力的な消耗は明らかでした。続くバイクセクションでは、無理にペースを上げず、体調と相談しながら慎重に進みました。補給に関しては、症状が落ち着いてから、まずは電解質タブレットを溶かした水分から慎重に摂取を再開し、その後、固形物よりも消化吸収が早いジェルを少量ずつ試しました。特定の種類のジェルはまだ受け付けなかったため、事前に用意していた多様な種類の補給食の中から、比較的胃に優しいと感じられるものを選んで摂取しました。
チームメイトは引き続き私の体調を気遣いながら、全体のペースをコントロールしてくれました。当初の目標タイム達成は難しくなりましたが、チームとして完走を目指すという共通認識を持ち、互いにサポートし合いながらフィニッシュを目指しました。
詳細な振り返りと分析
レース全体を振り返り、今回の消化器系トラブルとそれによる影響について深く分析します。
成功要因: * チームの強力なサポート: 体調不良を正直に伝え、チームメイトがそれに応じたサポート(荷物分担、ペース調整、ナビゲーションの分担)をしてくれたことは、トラブルを乗り越え、完走できた最大の要因です。困難な状況でのチーム連携の重要性を改めて認識しました。 * 無理な補給の中断判断: 症状悪化のリスクを避け、一時的に補給を中断した判断は正しかったと考えています。これにより、重篤な状態に陥ることを回避できました。 * 多様な補給食の準備: 事前に様々な種類の補給食を用意していたことで、トラブル発生後でも比較的受け付けやすいものを選択することができました。
失敗要因: * 事前の補給計画の精度不足: 計画通りに補給を摂取していたにも関わらずトラブルが発生したことから、事前の試用や計画に精度が不足していたと考えられます。具体的には、 * レース中の疲労やストレスが消化吸収能力に与える影響を十分に考慮していなかった。 * 特定の補給食(特にジェルや固形物)が、長時間行動下や特定の環境下(パドル中の体勢など)で、想定以上に胃腸に負担をかけていた可能性がある。 * 水分と固形物を同時に大量に摂取するタイミングがあったかもしれない。 * 体調のわずかな変化の見逃し: 異変を感じる前に、消化器系のわずかなサイン(軽い張りなど)が出ていたにも関わらず、それを見逃していた可能性があります。 * トラブル発生時の精神的な焦り: 計画通りにいかないことへの焦りが、冷静な判断を妨げる可能性があった点です。今回はチームのサポートで乗り切れましたが、単独行動であればより深刻な事態に繋がったかもしれません。
読者への学び: * レース中の消化器系トラブルは、体力やナビゲーションスキルとは別に、レースを継続できるかどうかに直接関わる重要な要素です。 * 事前の補給食の試用は必須ですが、実際のレース環境(疲労、ストレス、特定の姿勢、気温など)を想定した試用が重要です。ロングトレーニング中に、レースと同じように補給を試すことが効果的です。 * 体調のわずかな変化に敏感になること。違和感があれば早期に対応することが、症状の悪化を防ぎます。 * トラブル発生時は、無理に計画を継続せず、柔軟に戦略を変更する勇気を持つことが重要です。 * チームメイトとの密なコミュニケーションは、困難な状況を乗り越える上で不可欠です。自分の状況を正直に伝え、助けを求めることを躊躇しない姿勢が求められます。
装備レビュー:補給関連を中心に
今回のレースで使用した装備の中から、特に補給関連についてレビューします。
- ハイドレーションベスト: 行動中に水分やジェルを手軽に摂取できる点で非常に有効でした。トラブル発生後も、少量ずつ水分を摂る際に役立ちました。複数のフラスクに異なる種類の飲み物(水、電解質飲料など)を入れておくと、状況に応じて使い分けができるため便利です。
- 補給食ポーチ/ポケット: ジェルやバーを収納し、行動中に取り出しやすい位置に配置できるポーチやウェアのポケットは必須です。ただし、中に入れている補給食の種類を把握しておかないと、焦っている時に目的のものを見つけられない場合があります。種類ごとに分けて収納するなど、整理の工夫が有効だと感じました。
- 特定のジェル/バー: 今回、胃に負担がかかった可能性のある補給食については、成分や形状(ゼリー状かバー状かなど)を再確認し、今後の使用については慎重に検討する必要があります。一方で、体調回復後に受け付けたジェルもあり、やはり個人差や状況による向き不向きがあることを実感しました。
具体的な改善策:次へのステップ
今回の経験を踏まえ、次のレースに向けて以下の具体的な改善策を実行します。
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補給計画の抜本的見直し:
- 補給食の種類の選定: 今回負担となった可能性のある補給食はリストから外し、より消化に優しく、様々な体調・状況で受け付けやすいものを改めて選定します。天然成分を主体としたもの、低GIのものなども試してみる予定です。
- 摂取タイミングと量の調整: 1時間あたりの目標摂取量を維持しつつ、一度に大量に摂取するタイミングを避け、より頻繁に、少量ずつ摂取する方針に変更します。特に水分と固形物の同時摂取には注意します。
- レース環境を想定した試用: 次回のロングトレーニングでは、レース本番に近い時間帯や疲労度が高い状況で、新しい補給計画に基づいた補給を試行します。特に、特定の姿勢や気温下での消化具合を確認します。
- 補給記録の詳細化: トレーニング中やレース中の補給内容、摂取時間、その時の体調を詳細に記録し、どの補給が自分に合っているのか、どのような状況でトラブルが発生しやすいのかを客観的に分析できるデータを作成します。
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体調管理の強化と初期対応の練習:
- 体調記録の継続: 日常生活から体調の変化(特に胃腸の調子)を記録する習慣をつけ、自分の体のサインに敏感になるように努めます。
- レース前数週間の調整: レース直前の食事内容、睡眠時間、体調管理のスケジュールをより厳密に管理します。消化の良い食事を心がけ、新しい食べ物やサプリメントの摂取は避けます。
- 初期症状への対応シミュレーション: 体調にわずかな異変を感じた場合に、どのような対応をとるべきか(ペースダウン、補給内容の変更、チームへの報告など)を事前にチームメイトと話し合い、具体的な手順を確認しておきます。
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チーム内コミュニケーションの深化:
- 体調に関する情報共有の徹底: レース中、自身の体調に変化があれば、どんな些細なことでもすぐにチームメイトに伝えることをルール化します。
- 困難時の役割分担の再確認: 体調不良者が出た場合の、ナビゲーション、荷物分担、ペースメイクなどの役割分担について、具体的な状況を想定して確認し合います。
これらの改善策を着実に実行することで、次回のレースでは今回の反省を活かし、より安定したパフォーマンスを発揮できると考えています。
まとめ
サザンクロスアドベンチャーで経験した消化器系のトラブルは、レース戦略、補給、体調管理、そしてチーム連携の全ての側面において、多くの重要な学びを与えてくれました。目標タイム達成は叶いませんでしたが、困難な状況から多くの教訓を得ることができたという点では、非常に価値のあるレース経験となりました。
アドベンチャーレースにおいては、事前の綿密な準備はもちろん重要ですが、予期せぬトラブルに直面した際に、いかに冷静に判断し、チームとして対応できるかが完走、そして目標達成の鍵となります。今回の経験から得られた学びと具体的な改善策を、今後のレース活動に活かしていく所存です。
このレポートが、読者の皆様が自身のレースにおける体調管理や補給戦略を見直すきっかけとなり、より充実したアドベンチャーレース活動に繋がる一助となれば幸いです。